固定残業制度
残業代の削減の方法として固定残業制度を採用している会社が多くみられます。この制度そのものは確かに違法ではありませんが、運用方法を間違うと制度そのものが認められなくなり最終的には固定残業代と考えていた金額も残業代の基礎に入れて計算し直して全残業時間に相当する時間外手当を全額支払うことにもなりかねません。
また最近の裁判では、会社側にとってかなり厳しい判決となる傾向があり、厚生労働省でも固定残業代をめぐるトラブルの事例を挙げて対策に取り組んでいます。
つまり、これまでのように「残業代は給料に含まれている」と曖昧な説明では全く通用しなくなってきているということです。
固定残業が認められる場合

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固定残業が認められない場合

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どちらも50時間の残業をした場合ですが、左は34時間分10万円(2,925×34時間)が固定残業代となるので、実際に支払う残業代は34時間を超えた17時間分46,800円になります。それに対して、右は営業手当の10万円が固定残業代として認められないので、基本給の40万円に営業手当の10万円を足して時間単価を計算し、それに1.25を掛けた割増時間単価に全残業時間の50時間を掛けた182,750円が残業代として支払うことになります。
固定残業制度が、有効であると認められるためには、次の要件が備えられている必要があります。
- 基本給と固定残業代を明確にわけること
- 固定残業代の額は、固定残業時間数?時間単価?1.25を上回っていること
- 固定残業代に含まれる時間外労働時間数を明確にすること
- 含まれる時間外時間数を月45時間以内に収めること
- 固定残業代を上回る時間外労働がある場合には追加の残業時間分の残業代を支給すること
- 就業規則に定めるとともに、労働者に説明の上、雇用契約書も締結すること
例1
給与 250,000円(固定残業手当を含む)
例2
給与 250,000円
(時間外労働が月30時間を超えた場合には、別途手当あり)
例3
給与 250,000円(基本給+営業手当)
(営業手当は毎月30時間分の時間外労働手当として固定的に支給する。月30時間に満たない場合であっても支給する)
例1の場合は25万円の中に残業手当(時間外労働)が含まれていることはわかりますが、何時間分として含まれているのかがわかりませんし、残業をどれだけしても25万円しか支払わないとも受け取れます。
例2の場合25万円の中に月30時間までの残業手当は含まれていると考えられますが、残業手当としていくらなのかの内訳がわかりません。
例3の場合は基本給と営業手当と項目が分かれてはいますが、これも金額の内訳がありません。それと、月30時間を超えない場合であっても支給するとありありますが、月30時間を超えた場合にはどうなるのかが明確になっていません。
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