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インターンシップ制度について Q&A

インターンシップ生が労働者にあたる場合は、労働関係法規の適用があります。その場合は、給与を支払う必要があります。

インターン生が労働者であるかは、実態で判断されることとなっています。報酬の額・業務の性質・就労条件から、労働者と判断される場合は、労働基準関係法令が適用されます。

労働者と判断される場合には、賃金その他の労働条件に関して、労働基準関係法令が適用されるとともに、実習中の事故に関しては労災保険法が適用されます(平9.9.18基発636号等)。

労働関係法規適用の有無については以下のような点を考慮し、判断されます。

  1. 研修生に支払われる金銭が、一般の労働者の賃金並みの金額であること
  2. 実際の研修内容が、受入企業の本来業務の遂行を含むものであること
  3. 研修が使用者の指揮命令の下に行われていること
  4. 仕事の依頼への諾否の自由の有無
  5. 勤務時間・勤務場所の拘束性の有無
  6. 他人による代替性の有無
  7. 事業者性の有無
  8. 公租公課の負担

インターンの内容は多様化しています。インターン生に、より実践的な業務を任せたいという場合、インターン生の労働者性が認められる場合もあるため、判断が必要です。

行政通達によると、「インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる。」とされています(H9.9.18基発第636号)。

会社の指揮命令の下に決められた業務に従事し、対価として給与を支給するということになると、労働性が認められる場合があります。その場合は、労働関係法令が適用され、賃金の支払いも必要となってきます。インターンの目的を考え、より実践的な業務をさせたい場合は、インターン生を労働者と扱いインターンシップを実施するという考え方が必要になってきます。

本来、インターンシップは若者のキャリア支援の一環として行われるものであり、採用活動とは切り離されて考えられます。 しかし、インターンシップを実践することで、若者との出会いの機会が増え、また、自社のことについて知ってもらうことができるため、間接的には採用活動へのメリットがあると言えるでしょう。採用を考えてのインターンシップを実施する場合も、インターンシップはあくまでも選考をする場ではなく、インターンシップを入り口として、その後、面接や試験等で選考を行うという考えが一般的です。また、直接選考活動の一環としてインターンシップを実践したいという場合、選考活動に関する決まり、採用開始時期などに留意する必要があります。

インターン生が労働者と認められない場合、労災の適用がありません。インターン生の事故、もしくは、会社への損害のリスクを考慮した上で、保険に加入する、もしくは事故の可能性を考慮したインターンの内容にしていくという判断が必要です。

インターンシップに関連するリスクとしては、大きく2つ、
@企業側の過失等によるインターン生の不利益
A学生の過失等による企業の不利益、が考えられます。

インターン生の労働者性が認められず、労災の適用がない場合であっても、会社側には安全配慮義務が発生します。事故が発生し過失が認められた場合、損害賠償の責任を問われることもあります。

インターン中の事故に対しての厚生労働省の判断は、学生が労基法9条の「労働者」に当たるかどうかという観点から行われます。通達によれば(昭57.2.19基発121)、工学部などの学生が工場実習する場合は、大学などの教育目的で、教育機関から委託費が支払われ、実習内容も教育機関での実習規定等によるもので、支給される実習手当も一般労働者の賃金や最低賃金と比較して低く、実費補助ないし恩恵的な給付であると認められる場合、交通費などが支給されていても、労災保険の適用はない、とされています。

また、インターン生側のリスクだけでなく、インターン生の過失等による企業に対する損害(機密漏洩等)等のリスクもあります。このような場合、本来は、インターン生が企業に対して賠償すべきものですが、企業に生じる損害額は多額になる場合もあります。

インターン中のリスクに備え、安心してインターンを実施していくためには、保険への加入等を検討する必要があります。学校の実習として行われる場合には、学生教育研究災害傷害保険(任意加入)の適用対象に、それ以外の場合には、一般の傷害保険等に加入するという方法があります。インターンを実施する前にインターン生と企業の間で文書により明確にしておくことで、万が一の際のトラブルを防ぐことができます。

インターンシップ受け入れ時の書面については、現在、法律上の決まりはなく、義務となっている内容はありません。しかし、トラブルを防ぎ、安心して、インターンシップを実施していくためには、事前に、以下に示す項目について書面で明示しておくことが望ましいでしょう。

  • 実習の目的
  • 実習期間
  • 実習時間
  • 実習場所
  • 給与・諸手当の支給の有無
  • 実習中の事故等について(保険への加入等)
  • 秘密の保持等

特に、インターン生に労働者生が認められず、労災の適用がない場合、就業体験中の賠償事故やけがに対応した保険への加入については確認しておくべきでしょう。

また、インターン生に労働者生が認められる場合は、労働関係法規が適用され、労働保険が適用される場合があります。労働者性が認められるような内容でのインターンを実施する場合、雇用契約書など労働者を雇い入れるのと同じ対応をしていく必要があります。

また、インターン生に労働者生が認められる場合は、労働関係法規が適用され、労働保険が適用される場合があります。労働者性が認められるような内容でのインターンを実施する場合、雇用契約書など労働者を雇い入れるのと同じ対応をしていく必要があります。

セクハラを行った従業員に対しては、就業規則に基づき制裁を受けてもらうことは当然ですが、インターン生に対するセクハラは、企業にとっては社会からの大きな信頼を失うことにもなります。このような事態を防ぐためには、セクハラの防止について普段から教育をしていくことでしょう。

判例では、裁判所は一般的に、研修生に対するセクハラについては、行為者に対する厳しい処分を認める傾向にあります(東京都教委(新宿山吹高校)事件・東京地判平成12・5・31労判796号84頁)。インターン生へのセクハラが発生した場合は、企業は、学校や社会からの信頼を失ってしまいます。このような事態を防ぐために企業にできることは、社員に対し、会社内だけでなく社会に対しての関係性について、どのような影響をもっているのか、また、どのような影響与えていきたいのかを共有していくことでしょう。これらは規則やルールといったハード面だけでは防ぐことのできないものなのです。組織の当たり前のレベルを上げていくこと、恥ずかしさのレベルを上げていくこと、組織の人間性を向上させていくことが大切です。

 

 

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